
雲一つなかった。
隣のうるさかったライダー二人はまだ寝ている。
ボッボッボッボッボッ!と遠くでまだ明かりを灯らせながら漁船が浮かんでいた。

波は穏やかで、ザーッ、ザーッとやわらかいシーツのように何度も岸にかぶさっている。
濃霧でわからなかったが、こんな岸壁だったんだ。

やがて日が昇るともうすっかり暖かかった。
夜は結構冷えたのでどんどん体温が戻ってくる感じが気持ちいい。
ネットでここは年がら年中ほとんど霧に包まれた場所だそうで、このような景色になるのは珍しい事だと書いてあった。

顔を洗って歯磨きをしながら日が上がるのを見ていた。
あの濃霧の夜から一転、こんな景色に出会えるなんて思わなかった。
波が岸にぶつかって霧状になっている。
まだ誰も起きていなくて、一人でしばらくボーっとしていた。
闇を通り抜けた感覚はキャンプの好きな所です。
この抜けた感、闇と光りの差があればあるほど気持ちいい。
今回の旅は宿泊地に海、山、湖と3種類楽しむ予定だ。
とりあえずこの来止臥(キトウシ)野営場は海ステージでした。
タープはかなり中央がヘコんでいたが、何とか持ってくれた。
他の人達はここをただの寝るだけの場所にしているのに対し、僕は一人でタープまで建ててキャンプを楽しんでいるのが少し恥ずかしい。
でもまあ、楽しみ方は人それぞれです。
朝食はコーヒーに目玉焼きとパンをテントに入って前室で作った。
バターを買い忘れたが、ただ焼いたパンに目玉焼きを挟んでマヨネーズをかけただけでも十分に美味しかった。
食器を洗い、ゆっくりと一つ一つ道具を片付けた。
ここからが今までなかった事で、普通なら近くの温泉でも入って家に帰るパターンなんだけど、さらに距離を伸ばして違う所に向うのです。
後片付けをしながらこの新しい経験に楽しくなってきた。
次のキャンプの事も考えて道具もキレイに滞りなく車に収めた。
とくに次に必要な物から取り出しやすいように道具箱のレイアウトも考えて配置した。
基本的に遊んでいる訳だから全部楽しい。
ここをこうすれば少し機能的になるとか、こことここをまとめれば時間短縮になると言った、細かい改良が常に旅行中はなされていた。
この頃になるとライダー2人組や看板の前でテントを張ったジムニー野郎も目を覚ました。
彼らのテントを横切るとペグはぐにゃりと曲がったまま地面にかろうじて刺さっていた。
まずジムニー野郎が朝メシも食べずにさっさとキャンプ場を後にした。
僕もその後少ししてからライダー達を残して車を出した。
キャンプで一泊して車に乗った瞬間の安心感と言ったらたまらない。
毎回少し助かったと思ってしまう。
キャンプ場を抜けても快晴だった。
放牧の馬たちを横目に車を走らす。
もうこのまま次の宿泊地の羅臼まで行こうかとも思ったが、もうこんな所まで来ることもないだろうと思い直して納沙布岬を目指した。
続きます。
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