続き。
木田金次郎美術館の次に行ったのは「荒井記念美術館」。
途中、山道から横に入る小道がすごい分かりづらく、カーナビに頼ってもかなり難しかった。
ホームページにも何故、荒井なのかは載っていない。
でも中に入って荒井さんらしき肖像画があったので、おそらく出費者である荒井さんのコレクションだと思われる。
とにかく天気が悪く、駐車した車が動いて崖に落っこちてしまうんではないかと心配になるほどだった。
入るとカウンターに女性の方が一人ポツンと座っている。
美術館にふさわしい上品な物腰。
入場料は1,000円。
1,000円というのは美術館としてある程度のもの期待してもいい値段。
おそらく267点にも及ぶピカソの版画がそうさせるのだろう。
外は嵐で館内も薄暗く、ちょっと意識すれば十分怖かった。
3階にあるピカソの版画から斜め読みの感じで一気に見る。
ピカソに関して言える事は全部完璧だと言う事。
彼が作ったルールで彼しか答えが無いので当然だ。
とは言えピカソはデザイン的な基礎を突き詰めた人だと思う。
細部をじっくり見て行けば、お手本の様な構図と色。
冒険しているようで、もがけばもがくほど安定している印象がある。
その点、同時期に活躍したマティスはなるべく基礎から離れようと頑張った。
どちらも天才だが、ずっと見てられて部屋に置きたいのはマティスの絵だ。
ちなみマティスは僕が一番好きな画家であり、急に価値が下がる感じになるが、位置的には広島カープ、REM、忍者と同じレベルです。
あくまで僕の中での狭い世界です。
帯広美術館で一点だけ油彩を見れた事があったが、本物に出会えて感動したの覚えている。
話は戻るがこの建物、とにかく立派。
初めはホテルを改装して作ったのかと思わせた。
特に大きいガラスから眺める岩内周辺は曇り空なのに絶景だった。
こんなに素晴らしい景色はなかなかお目にかかれない。
写真じゃ決して伝わらない、迫力と自然の生々しさがある。
正直言って、絵よりもこれが一番感動させた。
今度晴れの日に是非来てみたいし、この景色に魅了された人はここに住まわざるを負えないかも知れない。
1階と2階にも絵が飾ってあって、各フロアごとにインフォメーションのカウンターがある。
もちろん受付に人なんていない。
裏に回ってみると、無造作に掃除機が出しっ放しだった。
図書館とかも結構あって、絶対誰も手に取ってみた事無い様な本がズラリ。
1冊1冊、どれほどの言葉が詰まって、どれほど世の中に意味を与えているのかわからんが、開かれなければ何も意味がない。
みんなそれぞれ黙っているなら黙っているで、それほど嫌な事でもないよと言っている風だった。
この次行く西村計雄さんの作品も多数あった。
ネットで見る限り大して興味が沸かなかった絵だった、本物を見て圧倒された。
とても見ていて気持ちよかった。
何かハッカの味に似ている。
清々しく、スーっとして気持ちよくさせてくれるが、それほど好きじゃない感じ。
だけど間違いなく本物って感じがした。
いやいや、やっぱり実物を見ない限り完全な評価は避けた方がいい。
その他に、小説「生れ出ずる悩み」をテーマにした道内作家による油彩画も沢山あった。
これもかなり面白かった。
テーマ決められて描くと言うのはシンドそう。。
小説をそのままイメージさせる物を描くか、それとも別の角度から見る側に喚起させるか。
どちらに行き過ぎても安易になってしまう。
その中間をいったモノがウマくいっている感じがした。
どれも超ウマいんですけどね。
これだけ堪能できたんだから1,000円はありだと思います。
僕的にはあの暴風の天気の中、暗い館でひっそりと来客を待っている受付の女性を見れただけで1,000円の価値はあった。
静かで寂しく、それでいて緊張感をとぎらせない感じ。
僕の車が去ったあとも、駐車場には彼女の赤い車だけが強い風に揺れていた。
あんな光景めったにみれない。
特に晴れた日ではダメだ。
そんな受付の人に魅了されて、しおりだけ買いました。
なるべく大切になくさない様に使いたいです。
続く。