今朝、早朝4時くらいに
外で何かドアの開く「キィィ〜、、、」ていう音が鳴った。
でも何か違和感があった。
何というか、この世とは別の世界から鳴っているように思えた。
そして誰かアパートの階段を上る音が聞こえた。
この時点でかなり怖かった。
そして体が動かなくなった。
これで異世界の野郎確定だ。
きっちりこの忍法だけはかけてきやがる。
これはもう確実にこっちに来るなとわかった。
やっぱり来た。
驚いたことに鍵がかかっているはずの玄関のドアを開けやがった。
恐怖はもうマックスに達した。
そして堂々と躊躇せずにやっぱり寝室のドアも開けて入ってきた。
しかし、この時僕は恐怖より怒りの方が増していた。
思えば幽霊だかなんだか知らないが、いつもあちら側がイニシアチブを取っているのが腹たつ。
そしてこっちがビビるであろうという堂々とした余裕な感じもムカつく。
もちろん勝手に入ってきて貴重な睡眠時間を削る行為も許せん。
などと、半分怖いんですが、半分こんな感じで恐怖を怒りで克服している事がけっこう嬉しかった。
だから今回はいけるという手応えをひしひしと感じていたが、奴は抜かりなく金縛りをかけていた。
そして僕の寝ている布団に両手を添えて揺らし始めた。
はじめはかなり焦ったが、
なんだよもう、揺らすだけかい!
と、このスケールの小さい行動にまた怒りパワーがグングン上がってきた。
もっと囁いたりしてビビらすとかしてこないのか!
でも声に出そうとしても、声がでない。
出てもほんと小さい声で実際音になっているかなっていないかだった。
しかもそのかぼそい声が相手にビビっているという印象を与えていると思ったらなおさら腹が立った。
何と言っても今回の僕は怒りにより気が充実している。
負ける気がしない。
よく考えてみれば、まず金縛りにするのだからまったくもってフェアじゃない。
とりあえずこちら側にこのロックをかけてからでないと近寄ってこれない奴なんて幽霊だとしても生前大したことのないやつに決まっている。
そして思いっきり力をいれた何度目かで、ようやっと解放された。
とびきり大きい声で
「コラ〜!」
というと同時に上半身をあげた。
それでも最初の「コ」はうまく出なかったので、ちょっと恥ずかしかった。
もちろん奴にたいして。
しかし誰もいなかった。
すごく寝汗をかいてて、カーテンからこぼれるすがすがしい朝日が顔にあたった。
勝った…。
だけど何にも達成感がない。
そしてトントントンという階段をおりる音が聞こえた。
この体験はたぶん僕の夢と現実のはざまでおこったものだと思う。
いずれにしてもチンケな奴がチンケな独身男を襲ったチンケな出来事だった。
もっと言えば隣に住んでいる人はきっと僕の「コラ〜」が聞こえたと思う。
朝からトチ狂ったチンケな隣人というジャンルも増えたことだろう。
とにかく何にもいいことがない。
何か、くるにしてももっとランク高めの奴がこいや。
こんなのが来るようでは僕も大したことないと思わざる得ない。
何だか自分の存在にケチがついたようで、思い返すとやっぱり非常に腹立たしい。
そんな事をグダグダ考えていると会社に遅刻しそうになった。
どうせ今朝きたやつはこの世をさまよって働いてすらいないんだろう。
そう思うとまた腹が立ってきた。