オスマン帝国の軍は大きく分けて「正規兵」、メフメト2世直轄の「イエニチェリ軍団」、そして属国や奴隷からなる「不正規兵」からなる。
この前、記事にも取り上げた属国の哀れなセルビア兵達も不正規兵としてコンスタンチノープルという要塞を始めて見た。
誰もが息を飲むほどその威厳に満ちた巨大都市に驚くというが、彼らセルビア王国の兵士とて同じ気持ちだった。
こうなったら、数多くの武勲をあげて戦争が終わったあと、セルビアとオスマン帝国をできるだけ対等な立場に持っていきたい。
セルビア兵の隊長であるミハイロヴィッチはメフメト二世による様々な無礼を忘れて、新たに気合を入れていたが、
メフメト二世の命令が飛んできた。
「馬は捨てろ、全員歩兵になれ」
彼ら騎兵団は幼い頃から馬術に関しては修練に修練を重ねてきたセルビアのエリートだ。
ミハイロヴィッチも今回の戦いで、国を代表する選りすぐりの騎兵を揃えてきたが、馬を降りれば兵卒と何ら変わりない戦闘能力になる。
おまけにトルコのように重い防具もはずされる。
「あと、馬は殺して、お前らの食料にしろ」
今まで遠い祖国からここまで自分たちを運んでくれた愛する馬を殺され、さらにそれを食えをという。
彼らオスマン帝国は遊牧民族の流れを組むので、羊の肉は食べるが馬は絶対食べない。
殺した馬の肉は羊の皮袋に入れられ、キリスト教国の参加兵用の肉として金角湾に沈めて貯蔵された。
馬から降りた1,500人の騎兵は歩兵となり、従属してきた騎兵1人に対して歩兵と従僕1人も合わせると4,500人の歩兵となった。
いや、歩兵というよりこれから始まる攻城戦の虫けらのように蹴落とされ、チリのように吹き飛んでいく特攻隊部隊となったのである。
この話も将来ミハイロヴィッチが残した回想録に書いてあったのだと思うが、こんな地獄の環境ってあるのだろうか?
そんな一人の人間の憤りなど、なんの価値もなかったんだろう。
今の世の中だって、ちょっと道を外れればこんな環境はなのかも知れない。
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