美笛とまた違って、こちらは割と整備された感じがある。
足こぎボートやら、売店も充実していて、キャンプ場というより、湖畔のちょっとした観光地にキャンプ場も後付けで開設した感じだった。
受付を済ませるために、管理棟に入る。
女性の方が外にまで出て「いらっしゃいませ」と丁寧に迎えくれた。
キャンプ場でいらっしゃいませと言われたのは初めてだ。
やっぱり、どちらかと言えば観光地っぽいからだろうか、いずれにしても孤独に歩いてきた身としては、人間から言葉をかけられる事で社会復帰ができた。
カウンターで名前と住所、電話番号など書いていると、店主の男性が
「明日はどうなさいます?」
どうなさいます?
どうするもなにも、また歩いて帰るだけだ。
「また支笏湖まで歩いて帰ります。。」
疲れていたので、急の質問に対応できなかった。
ここもモラップとかなんとか言う前に支笏湖なのだ。
僕はバス停のある所が支笏湖で、ここは遠く遠く離れた新天地みたいに感じていた。
「明日はきっと気候がとても良くて、山の散策には最高ですよ」
「そうですか、、」
それっきり会話は止まった。
散策なんていう余裕など今の僕には微塵もない。
また、移動手段以外に「歩く」という行為などするはずもない。
だからもう「そうですか」としか答えられなかった。
店主は僕の項目の最後に「徒歩」と書いた。
あとの客はみんな「車」だった。
キャンプ場は浜辺付近だけにあって、奥に行くほど傾斜があったり、石が多いので、テントを張るには適さない。
僕はひたすら奥まで歩いた。
他の浮かれた家族連れや若い仲間同士のキャンパーを尻目にズンズン進んだ。
そして、とうとう、行き止まりまで来た時に、だれかが作ったであろう岩場を利用した隠れ家的な所があった。
「ああ、ここはいいな、、」
まるでハックルベリーの家みたいだ。
水飲み場も3個あったが、一番近い所からもかなり歩いた地点だった。
だけど、もうここは誰もこない。
人の目を気にしないでもいい。
なんだったらフルチンでも大丈夫だ。
大体、ここはテントを張っていいところなのかもわからない。
でも、とりあえず腰を下ろした。
下ろしたら、座ったっきり動けなくなった。
まず、このクソ重いザックからの呪縛が解けた。
解けてもなんかずっと背負っている感覚は消えない。

しばらく水などを飲んで、湖を眺めながら休んだ。
それにしても、この隠れ家、丸太でベンチなど作ってあり、本当に生活していたみたいだ。
荷物は以外と少なかった。
あれだけ僕を縛り付けていたのに、こんなもんしか持っていなかったのに驚いた。
とりあえずビールを飲みたい所だったが、ぬるくなっていたので、ネットい入れて石の重みで流されないように固定して湖に浸した。
天気は最高で、少し暑いくらい。
波はちょっと荒く、結構うるさかったが、時期になれた。
ささっとテントを設営。
下が石なので、うまくペグがささる所とそうでない所があった。
どうしてもささらないところは諦めた。
そして地面が傾斜していた。
これは無理かな?と思ったが、もうテントを他に移動する気力は残ってなかった。
中に入ってマットの上で寝転んだら、まあ何とかいけそうだった。
少し間、感触を確かめていたら、体が横になったことで疲れがどっと出てきた。
もう、動きたくない。
しばらくほおづえをつきながら、湖をテントの中から見てた。
汗が少しずつ引いていき、心地良い水面を通ってきた風が吹いてくる。
何にも考える事ができなかった。
普段の生活なら逆に何かについて考える事をやめる事はできないが、ここではほぼ、意味のある構築をする事ができない。
してもすぐ崩れて、自分の呼吸音しか聞こえなくなる。
食料はこれだけ。
しかも炭まで持ってきたのに焼く物がウインナーしかない。
これには少々テンションが下がった。
そして今日はずっと重い荷物を背負って歩いたので、めちゃくちゃ腹が減っていた。
でもまだ時間は3時。
あとからもっとお腹が空いたらたまらないので、とりあえず我慢した。
それよりも、寝たかった。
再びテントに入って靴もズボンも脱ぎ、パンツ一枚になって寝た。
1時間半くらい寝ただろうか、短い割に爆睡で、起きた時は妙にスッキリしていた。
続きます。
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