
普通に歩いても1時間くらいかかるので、このズッシリ荷物をしょってはどのくらいかかるかわかりません。

千歳駅でバスを待っているあいだ、食料を買いに近くのコンビニまで行ったのだが、まず、2リットルの水は確実に必要だろうと、カゴに入れた。
これは水がなくなったあとも水を入れる容器として使えるからだ。
車で行く時は水は安いし、あったにこしたことないので、3本くらい買っていくけど、この2リットルの水の重さといったら、今回の徒歩キャンではかなりの覚悟が必要だ。
おかげで、買い物は何が食べたいとか、安く済ませようとかよりも「重さ」が最も優先して考える条件となった。
水を購入したので、その分いくらかでも軽くしよう、軽くしようという意識が過剰に働いていたので、肝心の食料をかなり少ない量におさえてしまった。
そのために、後からキャンプ場に着いて、なんともひもじい感じになってしまったのを後悔する。
思えば他の食材は軽いので、そんなに気にする事なかったのだ。
だけど、実際これだけの重さを持って長距離歩くのは初めてだったし、本当に担いで行けるかわからなかったので、かなり慎重になっていた。
コンビニでは購入金額に応じて三角くじもやっていたので、引かされた。
こういう時に限って、全部缶コーヒーが当たった。
店員が「今、引き換えていきますか?」と言ってきたが、もちろん断った。
とにかく液体が入った余計なものなどは、肩や腰に少しでも食い込んでくるイメージでやたらと怖かった。
とにかく、歩く。
完全に苦行モードに入った。
それもすぐ入った。
セミの鳴き声と通り過ぎる車の音だけが耳に入ってくる。
少し歩いては、辛くなり、時間を確認すると大抵、15分くらいしかたっていない。
一度、苫小牧市に入る。
これは苫小牧市の最北端で、本当に先っちょの部分だ。
何故だかわからないが、面倒な区分になっている。
途中、バス停を2箇所見つけた。
近づくとまだ機能していた。
新千歳空港までの直通便で、JR千歳駅には止まらない。
だから帰りはかなり遠回りになるが、これでいったん空港まで行って、そこから汽車で札幌まで帰ってもいい。
ここまで歩いてきて、かなりへばっていたので、帰りはちょっとお金がかかるけど、これで帰る事になるかも知れないと思った。
近道の砂利道を通る。
携帯は完全に圏外で、一応、WiFiルーターを持ってきてたが、もちろんすぐ圏外になり、この旅行中、まったく役に立たなかった。
だけどGPSは機能しているので、問題ない。
舗装されていないだけで、けっこう足腰にダメージがくる。
横切る車にも注意しなければならないし、巻き上がる砂ぼこりも苦痛だった。
あと暑い。
砂利道を抜けると再び湖に寄っていく道を選ぶ。
途中、さすがに腰が限界にきたので、道路脇のひらけた所にある切り株の上で休んだ。
もうここでテントを張ってもいいくらいだった。
とりあえず水と食料はあるのだから、どこでも一晩過ごせる事ができる。
なんと言っても、我は今、衣食住ごと移動している。
生きると言う意味では完全体なのだ。
その最悪、一晩だけ絶対に大丈夫という安心感が心地よかった。
しばらく汗が落ち着くまで、塩野七生のコンスタンチノープルの陥落を読んで休んでいた。
トルコが金角湾近くに勝手に城塞を築いている。
その条約違反行為を他の国はただ黙って見ているしかない。
まるで南沙諸島を実行支配しつつある中国のようだ。
夢中になって読んでいて、ふと思った。
思えば、ここら辺ってクマとかいるのかな?って。
きっとこんな気持ちになったのは、本の中の忍び寄るトルコの脅威に感化されたのかもしれない。
そう思って、ちょっと奥の茂みに足を踏み入れたら、ソッコーで見事にクマの糞があった。
さっき、別にキャンプ場に行って管理費など払わなくても、どこでも寝泊まりできるんだと生き物としての完全体を自負していたが、この糞を見て絶対に無理だと思った。
危険だ。
すぐに荷物をまとめて、歩き出した。
そう、僕にはトルコ軍に対抗する武力がなかった。
そして歩きながらクマが出没したとして、こっちにやってくるイメージをした。
バット、、。
そう、バットだ。
とにかく思いっきり殴れるものでないとダメだ。
不思議なもので、真剣に相手を倒そうと考えたら、やっぱり長い物なんだ。
僕は荷物の重さを少しでも意識から遠ざけるために、クマと戦うイメージを何度も頭で繰り返した。
こう来たら、こう。
こう来ても、こう。
という風に。
もちろん常に僕が勝ち続けた。
何度やっても、どうやっても、クマは僕の前にひれ伏し、小型犬のように逃げていった。
だけど本当にこんな道路の近くまで縄張りにしているのか。
文字どおり、それ以上は足を踏み入れる事ができなかった。
確かに徒歩キャンプの場合、危険な事もあるかもしれないので、武器を持った方がいい。
今度行く時は薪割りにつかったダガーを持ってこよう。
今の僕は武力0だ。
いや、0どころではない、バットを持っている状態がMAX100だとしたら、マイナス80くらいかもしれない。
とにかく歩く以外に体力は一ミリも残っていなかった。

再び千歳に入る。
モラップという看板があった。
近い。
近い、近い。
山も見えてきた。
キャンプ場の青看板も見えてきた。
到着。
美笛と違って、道路からすぐにもうキャンプ場だった。
ありがたい。
しんどかった。
そして徒歩キャンプは今の所、この6キロくらいが限界だと思った。
行く前は札幌から支笏湖まで歩いて行けるんじゃないかと考えていたのだから、本当に恐ろしい。
着いたとなると、急に体は楽になった。
続きます。
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