原節子さんが亡くなりました。
享年95歳。
何で原節子を知っているかと言うと、たまたま今年の春頃に小津安二郎監督の東京物語を見たからです。
その時はツタヤでレンタルして見たのですが、見終わった後YouTubeで全編見れたのを知って、少し作品の値段が下がった感覚になったものです。
今日検索してみたら、もうその動画は削除されていました。
これも今回の原節子がらみの影響でしょうか、わかりません。
この映画は映画史に残る作品だと聞いていたけど、カメラワークとかセリフがまるで舞台で行われているような感じで最初はすごい違和感を感じた。
きっと昔の古い映画はこんな感じなのだと思っていたら、それが小津安二郎の撮り方だと知ってさらに驚いた。
そっか〜、これってわざとこうしているのかと。
調べてみるとすごく神経細やかで、ありとあらゆる所にこだわりがある厄介な監督だとわかった。
カメラに写らない小道具まで入念な指示があったと言うのだから、スタッフは大変だったろう。
物語はわりとのんびりとたんたんと流れて、そんなに大きな事件などもあまりなく進んで行って最後もたんたんと終わって行く。
それでも深く心に残る感傷があります。
この感じを日本人が作ったと思うとすごく誇らしく思います。
いかにも日本人っぽいと言われそうだけど、むしろどこの国にもある普遍的な問題や感情が詰めこまれている。
セリフも真っ正面のアングルで笠智衆が何か一言言う。
原節子がそれを受けて、こちらも真っ正面のアングルで「ええ…」とだけ答える。
そして次のカットでまた真っ正面で笠智衆がボソっとしゃべる。
そしてまた原節子が短めのセリフを言う。
これはラストに使われた手法だけど、初めて映画を撮ったど素人のようにぎくしゃくしている。
普通なら二人を同じワクに入れて撮るところだが、あえて臨場感を消す方を選んでいる。
だけど、これがなんか良かった。
お互いに思っている事を顔に出さないように気遣っているのがすごく伝わってくる。
めったに映画で泣いた事ないけど、ラストの原節子が泣いて笠智衆がニコニコしているシーンでジワッと涙が出てしまった。
ここだけは小津安二郎でも笠智衆でもなく原節子だから泣けたと思っています。
見終わったあと色々と調べたら小津安二郎が60歳で亡くなったと同時に42歳で女優を引退したとあった。
東京物語のDVDについていた副音声の解説にも、お互い公にはしていないけど、しっかりと恋心をいだいていたんじゃないのかと言っていた。
鎌倉で隠遁生活を送っているというのもその時知った。
だから世間の印象通りすごくミステリアスで、正直言って不気味だった。
そして昨日亡くなったニュースを見て、改めてこの映画を思い出した。
決まった言葉しか言わないが、彼女は永遠に若い。
おそらくもうこんな独特の気品を持った女優は出てこない気がします。
ご冥福をお祈りいたします。
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