久しぶりに映画を見た。
基本的に約2時間拘束されるのが嫌で見ないのですが、面白い映画は別です。
今回見たのは昔っから見よう見ようとして、いつも二の足を踏んでいた「第三の男」です。
面白かったです。
僕が今まで見てきた映画で1、2位を争うかも知れません。
質の良い昔の小説を読み終えた感じで、わかりやすいのにすっごい考えさせられるものでした。
映画史上でもかなり上位に入ってくる超有名な映画ですが、白黒なのでもうそんなに見る人はいなくなっていると思います。
主人公はこいつ。
売れない小説家でアメリカ人。
友達に仕事を紹介されてオーストリアのウィーンまで何も持たずに尋ねてきた。
こいつは正しいし、カッコイイ。
おそらく世の中のほとんどの男はこれに近い格好良さを身につけていくと思う。
だけど着いたと同時にその友人が死んだと知らされる。
そして知り合った刑事からは最低の男だったと言われて、友人の名誉回復の為にすぐには帰らずしばらく滞在する事になる。
様々な情報を得ようと周りの人間に出会っていると、死んだ友人の恋人に会う。
そしてその美しさに惹かれつつ、友人の死が聞く人によって話が違う事に気づく。
その死んだ友人が実は生きていて、刑事の言う通り最低のクソ野郎だったと思い知らされる。
実際何の弁護もできないクソ野郎です。
でも、この死んだ男役のオーソンウェルズはすごい怖かった。
こんなのと対峙したら一言もしゃべれないと思う。
これも今まで見た映画の中で一番怖かった人物。
今までこんなに作りが丁寧でキレイな映画は見た事なかったです。
笑い、涙、友情、恋愛、推理、社会情勢、アクション、何か全てが整然と適正な量で全てが満たされた。
物語は見ている方の願い通りに進む。
進むけど、けど、何か見過ごしていないだろうかと思わずにいられない。
多少の犠牲を払ったが、全ては丸く収まった。
そして世の中はどちらかと言えば、丸く収まる傾向にある。
テーマは僕の好きなグレート・ギャツビーと似ていてる。
誰もが皆、失われ続ける。
絶えず少しずつにせよ、失われ続ける。
何をすれば良いのかと言えば、その失われる速度をどれだけ緩めれるかだけだ。
主人公は緩めた。
正しかった。
個人と社会、どちらを優先させればいいのだろう?とほとんどの人が永遠のテーマとして背負う。
その答えは、これも映画史上屈指の名シーンとされるノーカットでヒロインが並木道を歩いて去って行くシーンに凝縮されている。
このヒロインが最後まで死んだ男を信じ続ける。
そしてその具体的な答えは一切説明されない。
短いセンテンスが所々出てくるので、それでうっすら判断するしかない。
この女の一途な思いがあったからこそ、見ている方はもう一度話を考え直す事になる。
果たして、、?と。
もっともっと様々な角度からこの映画は仕掛けがあって、まだ整理がつきません。
売れない小説家って言う設定もすごく意味があります。
話の大筋を作った小説家であるグレアム・グリーンはこの映画が出来上がった後に、ちょっと設定を変えて小説として改めて出しています。
その理由が「この映画をもっと多くの人に見てもらう為」出そうです。
普通、小説の方が深く切れ込んでいけそうですが、これに限っては越えるのは無理だとわかっていたと思います。
思うに、ここまでの物を考えてまとめるのって無理なのではないか、、。
多分、戦争をリアルタイムで体験した人達が明日をもわからない強烈な精神のゆさぶりによって作ったものだから、ここまで難しいテーマをシンプルに作り込む事ができたのだと思う。
エビスビールでおなじみの曲がずっと流れていて、シリアスな場面でも関係なく使われるのですっごい違和感があります。
でもそのギャップが逆に怖さやハラハラを引き立てる。
これも初めての体験でした。
今こんなのやったら実験的過ぎる。
ま、とにかく久しぶりにとんでもないものに出会った。
しばらく映画見てみるかな、、。
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