これはネットで漫画の台詞を変えられて、ネタ画像によく使われているので何となく知ってはいたのですが、僕は「食」をテーマにしたものはあまり好きではないので、全くどういうものなのか知りませんでした。

しかし、今回「舟を編む」に続き、アマゾンプライムで動画が見れたので、ダラダラとみてしまった。
もちろん漫画ではなくて、この漫画を実写化したものです。
松重豊という遅咲きの俳優が演じる主人公は、個人経営で輸入食器を扱う仕事をしている。
時々この輸入食器の仕事についても語られるのですが、そんなのはどうでもよく、もっと言えば穴場の料理店に行くまでの伏線らしきものもあるにはあるのですが、それも全く重要ではない。

とにかくそこでしか食べれない知る人ぞ知る料理をうまいうまいと言って食べるシーンでほとんどの時間をさかれる。
こんな実食レポートを本当ならまだしもドラマの中でやられたってリアリティーがまったくない。
だから見ている方はきょとんとして、何が行われているのか初めは掴めないまま見る事になる。
そして、うまかったと言って食べ終わると、もう前半にあったかぼそい話の伏線を軽く回収して終わりなのです。
こんなつまらないものはない、っていうくらい本当い力が抜けてしまう話ばかりです。
いや、物語にすらなっていない、特別不幸にもならなければ、幸せにもならない。
ただ、うまい!というだけなのです。
でもこれが妙にクセになる。
本当にダラダラと見てしまう変な魅力があるのです。
それはきっと食べるという行為をしっかりと意識させてくれる助けになるからなのだと僕なりに結論づいた。
現にこれを見終わった後、普段気にしていない納豆や冷めたご飯でさえも、よく噛んでうまいうまいと思えるようになった。
「モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず、自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ、独りで静かに豊に…」
この台詞が作品を包み込むテーマであって、ソロキャンプするような僕にとっても実に居心地のいい場所を教えてもらった気がする。
しかし、こんなジャンルってあったんだ。
隙間も隙間で消え入りそうな感覚にしっかり光を当てて世の知らしめた原作の久住昌之はかなりの人物かもしれない。
彼が漫画家でもあり、装丁やデザイン、音楽まで作るのでマルチな才能の持ち主だから見つけられた場所かもしれない。
もともとこういう場所はこんな人が好む場所ではないのだから。
そしてこの30分程度のドラマが終わると、原作者である久住昌之がドラマで使われたお店に来店して実際取り上げられた料理を食べるのだけど、これがものすごくいいんです。
かつて食レポでこんなに美味しそうだなーって感じたのはないです。
久住さん自体がまさに孤独のグルメを地で行く人なので、とにかく感情がこもっている。
そして本編の主人公である井之頭五郎はタバコを吸うけど、お酒は飲めないという設定なのですが、久住さんはビールに日本酒と頼んで、これもまたグビっと実にうまそうに飲むのです。
僕的にはこの久住昌之の孤独のグルメをまとめて見たい。
この作品は谷口ジローの絵でもなく俳優の松重豊でもない、久住昌之が見つけた「自由」がウケたのです。
それにしてもなんて懐の深い作品なんだろう。
深夜食堂といい、こういうの流行ってるのかな。
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