Eテレでアウトサイダーアートの特集をやっていた。
少し視点を変えて作家ではなく、そのアートを世に知らせようと活動している櫛野さんのお話だった。
櫛野さんの生い立ちは普通の頭のいい進学校に進む、普通の人だったと言う。
そしてそのあまりにもノーマルがゆえにアウトサイダーアーティストの誰に何と言われようと突き進む生きる姿勢に感動したのだと思う。
番組の中で一番驚いたのは「昆虫千手観音」。
89歳のじいさんが2万匹のクワガタなどの虫を6年の歳月かけて集めて制作したもの。
近くで見ると昆虫がビッシリとくっついて、ダメな人は本当にダメな映像です。
アウトサイダーアートは障がい者だけではなく、こういったヒマをもてあました老人の作品も多いです。
もう一つはアートと言っていいのかわからないけど、芸事のくくりで言えばお笑いも立派なアートになるのです。
〝あそどっぐ〟という芸人で、顔と左手の親指以外はどこも動かない寝たきりの障がい者。
映像はハリセンで何度も何度もわりと念入りにしつこく叩かれるあそどっくさんが映り、叩かれ終わったあとに「空気読めや! 障がい者だぞ!」で終わりです。
これには思いっきり大笑いしてしまった。
笑いのメカニズムとして見る側の予想を大きく飛躍したものがくるともうそこには理性的な抑止力が働く時間が間に合わない。
大きく笑ってしまったくせに後でイヤイヤこれは笑えないわと思ってしまう。
そして僕の笑いは明らかに「動けない可哀想な姿の人が叩かれて、動けなクセにブチ切れてる」という完全に差別目線での笑いだった。
細い腕だったり、歪んだ表情、障がい者をハリセンでしつこくはたくなどのタブーがまさか大変だな〜や同情より、面白いの方が上回ってしまった。
だからすごく罪悪感を感じたし、そう思っても言ってはいけない。
だけどこのあそどっくさんはそれを笑ってくれと思っている。
その垣根を取り払おうとする。
罪を意識しないと本当に物事は奥まで考えられない。
よくこれをズルい笑いと言うのかも知れないが、初めてそう思わなかった。
「差」があるからそのフリ幅で他人の感情を動かせるわけで、やったもの勝ちだ。
でも、やっぱり複雑な気持ちになるし、ズルいな〜です、、。
最後に櫛野さんがある画家を尋ねて相談する場面が出てくる。
この画家は確か80歳くらいだったと思うが、肌の張りもよくて、とてもそんな年齢には見えない。
40歳の時に子供がいるにも関わらずサラリーマンを辞めて、日雇いの仕事などしながらひたすら絵を描いた。
ここまで割とありそうな話であるけど、この人は自分の絵を一切公表することなく今までいたのが変わっている。
絵はどれもだいたい顔がメインで、筆のタッチや色使いなどすごくいい感じだった。
奥さんもよくついてきたと思うが、この偏屈な絵描きに櫛野さんはこういうアウトサイダーアーティストの作品を世に広めていきたいのだが、果たしてそれは良い事なのか相談します。
誰の目にも触れられていないからこそのアウトサイダーアートなのであって、本人達は別に人に見られる事を望んでいない。
だけどこのわがままにやってきた画家は「いいんじゃないですか」とあっさり答えた。
一番それを嫌がってきた人がスルリと力が抜けたような答えを言ってきたので櫛野さんは覚悟を決めれた。
次のシーンで櫛野さんは改装中の建物の中でダンボールからアウトサイダーアーティストの作品を取り出している。
新しく展示する場を提供して、作品に値段をつけて売ると言う。
そっかー、値段をつけるのか、、。
これはうまくいくのだろうかと思った。
まず値段の基準が難しい。
でも彼の思いはもっとアウトサイダーアートを世に広めて、アーティストを支えたいだ。
当然それにはお金がかかる。
それはわかるが、やっぱり誰にも知られないでひっそりとやっている道ばたに落ちているような作品に価値があるような気もする。
と言っても彼が活動しなかったら今回のアーティスト達を僕はずっと知らなかったのも確かだ。
櫛野さんは見る側から本人もアウトサイダーそのものの道を行くと覚悟を決めた。
それに彼にはもうそれしか生き甲斐などないのだろう。
とりあえずツイッターをあそどっくさんと共にフォローしておいた。