この時計、以前勤めていた会社のデザイナーが、僕が入社するのと入れ替わりで退社した時に置いて行ったモノ。
それを僕が退社する時に自分の物と間違って持って来てしまった。
持っていた人はとにかくデザイナー特有の几帳面な人で、電池の取り替えた日付をいちいち裏に書いていた。
そう言うの見ると何だかやさしい気持ちになって、持って来てしまった以上大事に使わねばと思い13年間使って来た。
裏に書いてあった日付から合計20年以上休む事無く働いて来たコイツもとうとう寿命がきた。
電池を取り替えても針の進み方が遅い。
朝はこの時計で判断していたので、最近遅刻しそうになった。
思いきって捨てた。
思い入れはあったが、同時にたまには過去をバッサリ断ち切る儀式も気持ちいい。
前の会社は突然辞めると言って迷惑をかけたので申し訳ない思いでいたが、13年も経てばもういいだろう。
社長はキリスト教信者でとてもイイ人だった。
給料も少し低かったので、毎月2万円こっそりポケットマネーからくれた。
写植のじいさんは辞めると言った時、特に寂しそうな顔をした。
東京まで行って取って来た写植の国家資格も13年前ですでに意味を無くしていた。
写植のガラス版を見せてもらったが、1枚10万円くらいするものが50枚くらいあって、どれも良く手入れが行き届いておりピッカピカで、恐ろしいほど精巧で美そのものだった。
ちなみにこの時計の持ち主だったデザイナーはその後独立してWEBを中心に仕事を拡大している。
改めて思い返せばもっと色々思い出して来た。
ほとんど悪いイメージがない、彼女もいたし何かと幸せな時期であった様な気がする。
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