2015年1月13日火曜日

俺たちの日

ジョージ・P・ペレケーノスの「俺たちの日」を読み終わりました。



この小説、会社にあったものなんですけど、持ち主ももういないようなので借りて読んでいたのです。

家にはまだ読んでいない小説もたくさんあるのですが、自分が選んだものではない小説を何でもいいから読んでみたかったのです。

自分で買った本はお金を出す以上「ある程度良い」ものです。
その作家の過去の作品にハズレが少なかったとか、あの雰囲気を味わいたいとかが購入のきっかけとなります。
つまり損をしたくないので守りに入った読書です。
でも、大体こんな雰囲気だろうなと言うのが少し飽きていたのです。

そこでこの全くなんの知識もない「俺たちの日」はそんなランダムな作品選びにうってつけだったのです。
ガチガチのハードボイルドっていうのが題名や表紙の装丁からしてもわかっているので、見た目はちょっと笑ってしまう感じでもありました。
少し冗談半分で試しに読み進めたのですが、意外とズルズルとハマってしまって、とうとう昨日の休日は朝から晩までずっと読みふけって読了してしまいました。

とにかく登場人物が多くて、どんなちょい役も細かい設定とフルネームがあるから、重要な人物なのかも知れないし忘れてしまうので、本の上部にどんどん書き込んでいきました。



なので、この小説は一読して読み進める事は不可能で、細かい伏線などを思い出す為に何度も何度も過去のページを見直します。
そんな何度も戻っては読み直すを繰り返しているうちにその戻って読み返す行為に慣れてきて、大体この話はこの辺だとすぐわかるようになりました。

本流の話はほとんど裏切られる事がありません。
こうあってくれという読者の願いは多くの犠牲を持って叶えられます。
主人公のピート・カラスはハードボイルドとはこういう人物だというお手本の様な人物で、どんな脅しにも決して屈しない優しい男です。

「タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない」

というフリィップ・マーロウの名言がありますが、くさい使い古された言葉と思わず、これから未来永劫、これがずっとカッコイイ男の理想像だと思います。


ちなみに「俺たちの日」というのは邦題で、本当は「THE BIG BLOWDOWN」です。
意味としては「大きい何もかも飲み込む突風」なんですが、これは広島と長崎に落とされた原爆を意味します。
多分、日本版を出す時にタイトル名に配慮があったのでしょう。
話の中に第二次世界大戦の事も多く書かれていて、当時の一般的なアメリカ人によるジャップ(日本人)のイメージを知る事ができて興味深いです。
もちろん決して良いイメージでは書かれていません。
ただ戦っていた兵士としては最後の最後まで諦めない当時の日本人とやり合うのは意識の差が大きくあったようです。
国を取られると思い込んでいるの日本兵に対して、アメリカ兵は戦後補償は国からどれほど言われていたのかわかりませんが、得るものは命を張るほど決して大きくはなかったのです。
生き残って本国に帰ってきた者は小説の中で週20ドル(4万円くらい?)を何年間かもらえたそうです。

ネットで調べたら兵士は除隊後、奨学金をもらってタダで大学に行けるようになり、貧しかった移民の多くが貧民街から脱げだすきっかけになったそうです。
でもそれは相当なタフな人達に限られていたはずで、多くの人は精神的に大きな障害をかかえたのです。

そういう意味で本のタイトルにするくらいの「何もかもを飲み込む大きな突風」が色んな角度から考えられて面白いです。
「俺たちの日」は主人公が最後に言うセリフですが、この言葉をタイトルにして作品のイメージが決まってしまうと、作り手側としてはかなり納得いかないと思います。

この小説は他の作品にも時系列的に繋がっていて、全部読めば壮大なバックグラウンドが積み上げられて一つ一つ作品の深みも増して行くらしいです。


もっといろいろあるのですが、残りは他にメモしておきます。
機会があれば他の作品も読みたいと思います。








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