マンガの描き方みたいな本ばっかり読んで、自分のものがほとんど進んでいない状態が続いています。
デザインとか色とかでもそうだけど、実践よりウンチクだったり歴史だったりの方にいつも興味がいってしまうんです。

柳沢きみおの「おれ流 漫画の方法論」というのも最近読みました。
特命係長 只野仁で有名な人ですが、実はすごい漫画界のパイオニアなのです。

翔んだカップルを描いた人で、僕も内容は全く知らないのですが、この漫画のタイトルくらいは知ってました。
これはラブコメというジャンルを立ち上げた漫画で、この作品より様々な形でラブコメは進化していったのです。
一人暮らしの男子高校生の元にかわいい女の子が一緒に住み始めるといった、夢のようなお話は作り話と言えどしっかりと男の願望を視覚化してくれた。
浅倉南ならぬラブコメ最初のヒロインはこの山葉圭なのです。
本の内容はそんな柳沢きみおがデビューから現在までいかにヒット作品を考えてきたかが綴られています。
これをやればこうなると言った技術的なものはほとんどなくて、最後の方は趣味の話などダラダラっとして終わります。
そんな中でも特に僕の目に止まったのがチャンピオンでギャグ漫画を描いてた時の話です。
この人元々はギャグ漫画家としてデビューしていまして、しばらくギャグ専門でしたが、翔んだカップルから徐々に路線を変えて行ったのです。
その当時のチャンピオンには山上たつひこのがきデカがあり、当然圧倒的なギャグセンスに太刀打ちできるわけもなく、ギャグ漫画を止めようと思ったそうです。
本の中にも作者自身の当時のギャグ漫画が数ページ載っていますが、確かに全く笑えないというか、ただドタバタしているだけの感じでした。
でも当時はこれで充分面白かったはずで、その名残みたいなものは僕も子供の頃味わっています。
ですがその圧倒的な力量を見せつけられた山上たつひこのがきデカを軽々と何段とばしもして抜いて行ったのが鴨川つばめのマカロニほうれん荘だっと言います。

天才が天才をどんどん追い越して行く様は本当に驚いたそうです。
山上たつひこはまだストーリーを細かく繋いで行っているのがあったそうですが、マカロニほうれん荘は色んな角度から突拍子もなく笑いを起こさせる魔法のような漫画だったそうです。
僕も結局これ以上の漫画には出会った事なく、わずか6〜7歳くらいに出会った衝撃が未だに忘れられません。
そっか〜、やっぱりそんなにスゴかったんだと、これがわかっただけでもこの本を買ったかいがありました。
そして改めて本棚にあるマカロニほうれん荘を読んでみると、普通に今でも一人で声を出して笑ってしまうのです。
昔は腹が痛くなるくらい漫画を片手に笑ってましたから、これでも大分収まった方です。
だけどマカロニほうれん荘の連載期間はわずか2年。
その中でも爆発的に面白かったのは全9巻中7、8、9の3冊だと個人的には思います。
「ギャグ漫画の才能は、神様が一生の中で、たった1本だけくれた鰹節のようなもの」と本人が語ったように、その後プッツリと描かなくなり、描いたとしてもビックリするくらい笑えない味気のない作品でした。
ただ40年経った今も色褪せないこの漫画は芸術以外の何物でもないと思っています。
その点、柳沢きみおは常に時代の潮流に乗り、スタイルを何度も何度も変えて現在66歳でもまだ描き続けています。
本の中でもウサギとカメなら僕は後者ですと言っています。
そしてどちらかと言えば職人気質なんだと思います。
読者がああなりたい、こうあって欲しいを一番のテーマにしていたそうです。

翔んだカップルも続きを描いてます。
憧れであった山葉圭もあっさりと脱いでくれます。
新しいものを生み出すのに貪欲な作者です。
破壊すれば新しいのが生まれるのは知っているのです。
絵はすっかり変わってしまって、もう続きだと思えないのですが、この二人は結局結婚しないそうです。
今度まとめて柳沢きみお読んでみよう。
とりあえず気になる大市民から。