2018年3月3日土曜日

はは〜系

前回の「荒野のギターソロ」に続いて、また前から気になっていたジャンルの事を書きます。

それは「はは〜系」です。

なんのこっちゃわからないと思いますが、順を追って書きたいと思います。

先日、友人から中国の有名な歴史書である史記の中から一つのエピソードを聞きました。
魏の国に家は貧しいが口が達者だった頭のいい「范雎」(はんしょ)という人がいました。
かなり話ははぶきますが、才能や頭が良すぎる人にはよくある事で、魏の国の宰相(当時で言えばほぼその国のトップ)である須賈(しゅか)からあらぬ疑いをかけられてしまいます。



あばらや歯を折られたあげく、簀巻き(すまき)にされて便所に投げられ、みんなから小便をかけられ続けた。








という地獄のような屈辱を味わった男なのですが、番人にあとで礼をするからと逃してもらい、友人を頼って秦という国に逃げて、そこで権力争いを勝ち抜き、秦の国の宰相までなった。

秦の国は范雎のおかげでどんどん強くなり、やがてむかし屈辱をうけた魏の国を攻めようとしたが、魏は攻められたくないので、かつて范雎を便所に放り込んだ須賈(しゅか)を和睦の使者として送る。

范雎は忘れもしない憎き須賈がくると知って、わざとみすぼらしい格好をして須賈の前に現れた。
驚いた須賈は范雎に今はどうしているかと尋ねると「人に雇われ労役をしている」と聞き、かつて自分がしたことを少し悔いたのか絹の肌着を与えた。




そのあと秦の宰相に謁見しようと緊張して赴いた須賈が会ったのはあのみすぼらしい格好をしていたさっきの范雎であった!

絹の肌着をくれた同情心に免じて命はたすけてやる、だが、お前の王である魏王の首をもってこい!

は、はは〜!!





ということで長々とウィキにのっていることを書いてしまったが、ようは取るに足らない者として扱っていた人間が実はすごい偉い人だったので立場が逆転するというよくある設定の元祖なのではないかというお話です。

この設定を「なんでもない奴が実は〜だった話」というまわりくどい言い方ではなく、なにか呼び名があるはずだと思い、調べたがリサーチ不足かもしれないけどはっきりと出てこない。




だからとりあえず正体がわかった時にひれ伏す様から僕は「はは〜系」と名付けておいているのです。

その「はは〜系」に代表的な話と言えばもちろん「水戸黄門」があげられます。
これは、ただのじいさん→水戸の光圀公ということで、切り替えのスイッチボタンとしてのアイテムは印籠になるわけです。
決め台詞は「この紋所が目に入らぬか!」





そして次に有名なのが、「遠山の金さん」
下町の遊び人金さん→北町奉行。
アイテムは桜吹雪の刺青。
決め台詞は「あの晩、見事に咲いた金さんのお目付け
夜桜を、まさか己ら! 見忘れたとは、言わせねえぞ!!」(長い、、。)





3つめは前の二つと比べ少し劣るが「暴れん坊将軍」
貧乏旗本の三男坊→8代将軍徳川吉宗。
アイテムというか証拠は顔。(前に悪人は城で謁見している)
決め台詞は「愚か者!余の顔を見忘れたか!」
しかし、顔で将軍と同じ人物だという証明はかなり弱い気がする。。



そしてまだまだあると思いきや、どうにもこうにも思い出せない。
こんなもんなのかな?「はは〜系」。。。
何と言っても水戸黄門の印象が強烈すぎて、他がかすんでしまっているのかもしれない。

だけどこの「はは〜系」は使い古されながらも、また、話の展開が途中からわかってしまっても安定した面白さがある。
見ている方はあとからひれ伏すであろう悪人や周りの人間をニヤニヤして眺める。
きっと多くの人は日々こういう「いつか見返してやる」思いでいるのだろう。
そして、いたずらやドッキリ大作戦を主役とともに楽しんでいる。

復讐といってはすこし後ろめたい気持ちにもなるが、だいたいにおいて多くの幸せは勝利からなりたっている以上、敬遠せずに素直に認めたい心の動きだ。

これが水戸黄門の方向でばっかり見ているから気づかないかもしれないけど、長い人生知らず知らずに人に恨みや嫉妬を買い、見返してやりたい対象になっている場合もある。

そこで一番始めの范雎の話に戻るが、敵役である魏の宰相は再会した范雎に同情して、絹の肌着を与えたおかげで、あばらと歯を折り、便所に簀巻きで捨てたにもかかわらず、命だけ取られずに済んだ事を思うと、どんな人にもささやかでいいから温情の証を示しておくことが大事なんだと学びます。

まだまだ思考していけば奥が深そうな「はは〜系」はきっと人生の縮図があると思うけど、これを話す時にやっぱりひとくくりに総称する名前が必要だという思いも深めるのです。
勧善懲悪とも違うし、三幕構成とも限らないし、お約束といっては幅が広すぎる。
おそらくしっくりくるのは復讐劇なのかなー?
でもなんかおおまかにくくりすぎるような気がする。

きっと世界中にはこの「はは〜系」がゴロゴロしているのだと思います。
特にギリシャ神話に多そうだ。
そして多くの話はかなり盛っている。
史記を書いた司馬遷も例外ではない。

ポイントとしては過剰なまでなストレスからの過剰なまでの回収です。
当事者としてはたまったもんでないけど。
いずれにしても冷めた人間では体験できないことです。

他に何かみつけたらまた報告します。
そして見つけたら教えてください。


思い出したけど山下清も「はは〜系」ですね。










2 件のコメント:

  1. ガラスペンはかせ2018年3月6日 13:18

    そうなんですね!わたしは友人にガラスペンについて教えたら、その友人が実はとてもいいガラスペンを持っていたと知った時は、はは〜ってなりました!

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  2. ガラスペンあるあるですね!
    その他にも飾ってうっとりと眺めてしまうもありますね!
    人のガラスペン見てわがガラスペンを直せなんて言葉もあります。

    でもガラスペンは一つ一つ手作りだから当たり外れがあるそうですね。
    僕は小樽で購入しましたが、7本あるうちから実際に書き味をためして良さげなものを選びました。だけど実際はたくさん使ってみないとわかないし、比べるガラスペンがないので選んだペンがあたりなのかハズレなのかよくわかりません。

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