2018年2月25日日曜日

荒野のギターソロ

ずっと気になっていたジャンルがあります。

それは「荒野のギターソロ」です。



























昔のハードロックのビデオクリップ(今はプロモーションビデオというのかな)では割とギターリストが何もない荒野でギターソロをひく絵が使われてきました。
今回はその事について一度自分なりにしっかり整理してスッキリしたかったので記事にします。

CDを買う時、消費者としては容姿などよりもまずは音楽そのものが良いものでないと買わないと思います。
ハードロックとかヘビーメタルの場合、アルバムを構成する曲の中で、「ノリのいいキャッチーなもの」そして「珠玉のパワーバラード」の二つが最低入っていないと、売れるアルバムとしてはいけない感じでした。

大体売れたアルバムというのは、こんな条件はあっさりとクリアして、さらに2曲、3曲と合格点の曲が入っており、さらにかっこいいイケメンのボーカルなども魅力アップのオプションとして重要になっていきます。

そしてさらに他と差をつけるならば、超絶テクニックのギターリストがいるかどうかも、勝ち負けの判定条件に加わっていくのです。

売れた勝ち組がある程度の水準まで評価を争った時に意外と「いいギターリストがいるか」で票を決する場合があったのではないかと推察するのです。

Aメロ→Bメロ→サビを2回ほど繰り返したあとにくる休憩時間のようなギターソロ。
実際にライブなどでもボーカルの喉を休めている効果があると思います。
そしてメロディラインとは一線を画した長尺の速弾きによるギターソロにどんどん各バンドが力を入れだしていた傾向がありました。

そこでその過剰な競争はビデオクリップでも出てきて、冒頭では述べたように「荒野のギターソロ」がどのバンドも使いだしたのではなかろうかと思います。

これを最初にやったバンドはわかりませんが、きっとあきらかに受けがよかったのでしょう。
もはや見ている方はなんの違和感もなく、特にカッコイイとも思ってなく、お決まりのものとして見ていたはずです。

まず代表的なものが

エアロスミスのエンジェルです。
動画→ Angel


ギターソロになり、広大な道路の真ん中で人がいるショットからはじまり、


舐めるように空撮からジョーペリーのアップへと短めではあるけど、しっかり「荒野のギターソロ」のお手本のような絵が見られます。

ただジョーペリーのギターソロは全体的な曲から逸脱するような感じではなく、メロディーに沿った聴きやすいものがほとんどです。
過度な速弾きとか、テクニックをみせびらかすことはしません。




次に
ボンジョビのベッドオブローゼス。
動画→ Bed Of Roses



これは荒野ではなく、山の頂きに人影が見えるところから始まります。



そして寄りになると全身黒で身を包んだリッチーサンボラが登場。
荒野のギターソロシリーズの中でも一番壮大な景色が見れます。
多分、山の頂上にもヘリで直接行ったのでしょう。
スケジュールや予算的にも絶対失敗できないので、後で変なカッコ悪さがでないように、サングラスに革のコートで帽子はテンガロンハットにしたのだと思います。
リッチーはジョーペリーよりは自己主張の強いプレイを見せますが、それほどしつこくありません。
あくまでも売りにするのは一貫してボーカルのジョンボンジョビというプロジェクトが揺るぎなかった印象があります。



次はガンズのノーベンバーレイン
動画→ Novemver Rain




このビデオクリップは物語形式となっています。
物語にはなっているのですが、内容はイマイチぴんときません。
とにかくアクセルの結婚式をやっている教会をスラッシュが一人抜け出して横風吹きすさぶザ・荒野で腹をだしながら己のプレイに酔いしれるのです。



この風ではトレードマークのシルクハットをかぶれないのか、さらにいつもしているサングラスもかけず、タバコを吸いながら髪が完全に顔をかぶっているので、ロック界のマスクマンとしての秘密がギリ保たれています。
スラッシュの場合はイジーが抜けた後だったので、戦略的にもこの面白いキャラをより前に出そうとしていた時期でもあり、この荒野のギターソロはこれでもかというくらいアピール度が高い仕上がりになっています。
この曲の最大の見せ場はこの荒野のシーンではなく、後半の曲調が変わるスラッシュがアクセルが弾くグランドピアノの上で演奏するギターソロというのも付け加えておきます。

荒野のギターソロは真剣にカッコつけているから魅力があるわけで、彼らギターリストはバンドのメインギターリストとしてファンのキッズ達からはカッコイイ憧れの存在であらなければならない。
ロックと言えば「エレキギターを弾く」というのがあります。
彼らギターを担当している者たちは、そのかっこいいイメージを寸分も壊してならない責任も負っている。
ロックの代名詞とも言える神の武器ギターを持たされている以上彼らの立ち振る舞いでバンドに入る収益も大幅に違ってくる。
見た目でいったらリーダー格のボーカルの顔立ちやスタイルは非常に大事ですが、テクニックといえば彼らであり、将来バンドを組みたいキッズたちにとってははるかに重要なポジションだと思います。

だけどその失敗は許されないという一貫したビジネスが、荒野でギターを弾くという使い古された安パイを打ってしまうので映像全体の唐突感が半端なく、どこかギクシャクとしてしまいます。
結果、ひいき目で見てもダサ目に映ってしまう宿命を持っています。


最後にこれはちょっと特別なやつを。
シンデレラでドントノウホワットユーゴット。
動画→ Don't Know What You Got



このビデオ・クリップはそもそも全員が荒野で演奏しているので、厳密にいえば唐突に始まる荒野のギターソロとは言えないのですが、荒野のビデオ・クリップとして一番記憶に残っているのがこれです。

まずはメインボーカルのトムキファーがギターではなく、荒野のピアニストで登場します。
海岸沿いのゴツゴツしたところにグランドピアノをおいて一人で歌っている。





ギターソロのシーンでは名前は忘れた日系人(忘れたというか初めっから覚える気がない)のギターリストは使われず、ここでもボーカルのトムキーファーが荒野のギターソロを担当します。
朽ちた木造の小屋の前で気持ちよくプレイしてくれます。
ライブでもギターソロはトムキーファーなので、ギターソロをさせてもらえないヘビーメタルバンドのギターというかなり珍しい存在となっております。

なぜ日系人が採用されていないかというと多分俺が俺がという自己主張の強くないお人好しな性格なのではと考えます。
とにかく彼の顔を見れば納得すると思います。
とても優しそうです。


全てに共通している事なのですが、要はビデオクリップにライブ演奏やスタジオの収録ではとれない開放感や迫力のある絵を入れたかったのでしょう。
それならやっぱり空撮は一番適しているし、どこで使うかと言えば曲の合間に入るギターソロでという感じになってしまうのかな。

荒野にはその字の通り荒々しさ、雄々しさ、スケール感、などなど荒野にさえおいてしまえばそれらがセットでお手軽に見せれる安定感があるのです。

もっと探せばいくらでも出てくると思うこの「荒野のギターソロ」。
収録あとの彼らギターリストたちも拭いきれない違和感を残して帰ったことでしょう。

だけどその黒歴史を背負って演じる彼らに未来への負の遺産を請け負う男らしさを感じるのです。
だから結局彼らは何周も回り回ってカッコいいということで僕の長年のモヤモヤも清算されたように思えます。

日系人のギターリスト以外は。










2 件のコメント:

  1. ガラスペンはかせ2018年2月26日 10:30

    そんなジャンルがあるんですね!それって初耳です!

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  2. たぶん僕の他にも気づいている人はたくさんいると思います。
    ググったら何かしら出てくると思いますが、どういう言葉のキーワードで探せばいいかあやふやです。。。
    昔のビデオクリップなんてこんなもんだろうで片付けてしまえば簡単なのですが。
    だから僕は「荒野のギターソロ」という枠組みを今回つけれたので、非常にすがすがしい気分です。

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