小樽に着いたら着いたで、みんなバタバタとホームの階段を降りて、向かいのホームに待機している倶知安行きの汽車に乗りこむ。
ここ小樽で降りる人などほとんどいないように見えた。
僕が乗り込む頃にはあっという間に満員でみちみち状態。
それどころか、もう乗車率120パーセントくらいなのに、窓越しには逃げ惑う難民のようにこれから乗り込もうとしている人の列が見えた。
いやいや、君たちは無理でしょ。
次の汽車に乗るしかないと思うよ。
というか、なんでこんなに混むのに2車両しかないんだ。
週末はこうなるんだからもう1車両増やしてもいいだろ。
特に僕みたいな超重量級の荷物を背負ってる人間は2人分くらいスペースをとってしまって、非常にいたたまれない。
でも、かなり時間がかかったが、絶対無理だろと思っていた難民達も少しずつ少しずつ、ゆっくり飲み込んだ。
曇り空で比較的暑くない日だったが、さすがにこの人の密集率では、グングン車内の温度が上がってきた。
そしてさらに僕は足が痛くて少しずつ感覚がなくなってきた。
これは余市まで我慢だな、、。
余市に着けば人もかなり降りるだろう。
汽車がゆっくり動きだす。
全員、息をするのも慎重に20分くらいの時間をじっと我慢する覚悟を決めている。
それにしても暑い。
僕も汗をかいてきて、密接している人たちに気を使うストレスを感じてきた時、誰かが
「あーっ、あったー! あれだー!」と言った。
声の発する方向は右斜め後ろだったが、もちろんこの混みようでは振り向くことができない。
すると僕の前に座っていたおばさんが
「ああ、これね!」
と言ってスイッチを押した。
後方から首と背中を包み込むような「冷」がやってきた。
世界がガラリと変わる。
オアシス。
目線だけなんとか後ろに向けると、少しほこりのついた天井に備え付けの扇風機が回っていた。
「オーッ!!」
と乗客の自然と口からこぼれる感嘆の声が重なった。
そして、少しの笑いとともに小さい拍手がちらほら聞こえてきた。
なんかわからんが、なんとなくNHKの朝ドラような、人と人の温かさみたいな空気が流れた。
今、この何分かの間におこった不快からの解放。
これは、ここに居合わせた人達が共有した、寸分たがわない感覚への笑いと拍手なのだろう。
このように集団なんぞは負荷を与えれば、少しの解放だけでかなりまとまりあるものになる。
僕もこの解放感には扇風機原理主義者に生まれ変わることに何の抵抗もない。
目の前に座ってスイッチを押したおばさんは、のりこんだ時に見たどこにでもいる年配の女性とは思えない、肌ツヤの輝きが増していた。
そんな少しだけ快適になった汽車は余市に着いたら確かに少し人は降りたが、その分、また乗ってきたのでそんなに変わらなかった。
それでも倶知安につくまでには徐々に人が降りて行った。
特に仁木駅ではかなりの人が降りた。
イナゴの大群のように果物を奪ってくいくのかも知れない。

小樽からはほとんど無人駅なので、このようにバスと同じ整理券システムの車両だった。
倶知安に近づくと運転席で「キィーキィー」と何かが動く音が聞こえる。
よく見ると運転席前方の窓に何やら黒く動いているものが、、。
ワイパーだ。
雨だ。。
汽車のスピードがあるので、そんなには降っていないと思うが、、。
でも、こんなに苦労して来たのだから、ちょっとしたくらいの事ではもう引き返せない。
もう着くからいまさら感もあるが座った。
足は一度限界のピークを過ぎて麻痺状態になり、そこからランナーズハイのように痛みを感じなくなっていた。
ようやっと倶知安駅に到着。
雨は降ってなかったが、どんより雲で空は黒かった。
階段を昇るのがきつい。
徒歩を始める前にかなりのHPを使ってしまった。
まあ、とりあえず着いた。
去年はカウパレードで何度かこの駅には来たけど、自主的にくるとまったく景色が違う。
何というか、歓迎されていないし、優しさがない。
グーグルマップを立ち上げて、半月湖の方向を見る。
さあ、歩くか。
徒歩キャンプのメインは何と言っても目的地まで向かうこの徒歩にある。
少しひんやりとした風が吹いていたが、歩き始めて5分もしたらシャツがまた湿り始めた。
続きます。
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